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■[学習] 交通論・国際物流

(タイ洪水によるサプライチェーン影響について)

 

前回、[学習] 交通論・国際物流 (課題用資料整理)https://www.fxfrog.com/?p=4261 を公開したところアクセス数が一時的に多かったので、引き続き学習した内容をもとにブラッシュアップして書きます。

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まず、サプライチェーンの影響とは何だろう?

影響がどうなるというのがネット等の情報が得られにくいものである。

インフラがダメになってもサプライチェーンに影響になる、「サプライチェーンの寸断の影響とは?」

仮に自動車産業を考えた場合、自動車一台は約3万点の部品から構成されてる。

タイはアジアにおけるデトロイト(自動車産業の中心地)である。

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『日本電産』を題材にざっくり書いてみる

・・・思慮不足な内容です。(ええ、わかってます)

 

タイでは日本企業の重要な生産拠点(生産ノード)があり、サプライチェーンによって日本企業に影響出ていることを知った。
そこで、著名なハードディスク用モータおよびハードディスクをOEM供給している日本電産の子会社の洪水影響を調査し述べる。

日本電産の現地子会社のうちロジャーナ工業団地2社はタイ政府より退避命令が発令されたため7月10日以降、操業停止している。ロジャーナ工業団地以外の現地子会社は従業員の通勤が困難だけでなく、配送センター(DC)の共用利用が一部寸断されていることもあり生産能力は洪水前の半数以下に留まっているが、OEM供給が完全停止しているわけでない。

参考までに今年第三四半期は約1億4,000台だったHDDモータの世界出荷台数は、第四四半期には1億台程度であると減産は僅かになる見通しを11月10日付ロイター配信により明らかになった。また日本電産はBCP(business continuity plan/ 事業継続計画)に基づきフィリピン工場にも空きスペースがあることから急きょ最新鋭の生産設備導入する方向で洪水復旧後のHDDモーターの収益性は以前より改善する可能性が高いフォアキャストを野村證券が10月27日付で公表していることが興味深い。

A.【タイ日本電産株式会社 ロジャーナ工場】
所 在 地 : タイ アユタヤ県ロジャーナ工業団地
代 表 者 : 丹保 邦康(たんぽ くにやす)
資 本 金 : 19億5千万バーツ
出資比率 : 日本電産 99.99%
事業内容 : HDD(ハードディスクドライブ)用モータの製造
操業開始 : 1995年8月
生産能力 : 月産20百万台

B.【タイ日本電産精密株式会社 ロジャーナ工場】
所 在 地 : タイ アユタヤ県ロジャーナ工業団地
代 表 者 : 水尻 義夫(みずしり よしお)
資 本 金 : 4億5千万バーツ
出資比率 : 日本電産 99.99%
事業内容 : HDD(ハードディスクドライブ)用部品の製造
操業開始 : 2007年10月

日本電産ではBCPに基づき1工場が操業不能となった場合、他工場の生産能力を高めることで完全生産停止に陥る状況から免れている。なおBCPを正しく管理し運用するBCM (business continuity management / 事業継続管理)がその評価基準に該当する。

A工場に対して、パトンタニ県ランシット工場では10月25日より操業再開、パトンタニ県バンガティ工場団地では11月12日よりラヨン件より借り受けた工場での代替生産を開始した。

B工場に対して、ロジャーナ工業団地より離れた同アユタヤ県ワンノイ地区アユタヤ工場で11月4日より操業再開した。

なお、A,B工場とも11月8日より懸命の排水作業を実施している。

今回の水害でHDD生産のすべて生産供給が停止したのではなく、HDD用ベースプレートは浸水被害なく操業継続している工場も含まれる。ロジャーナ工業団地のみの生産工場だった場合、日本電産が被る損害金額は計り知れないものであったと考えることは容易に想定できる。

日本企業はサプライチェーンを考える際に、もしもどこかのノードが天変地異で分断された場合、代替ノードへのリンク、チャネルは迅速に利用可能となるよう考えられていなければならず、そのうえで初めてサプライチェーンマネジメントが確立するものと考える。

また日本電産のように工場を分散生産し事業継続性を高めていないその他の日系電子部品製造者としてソニーではアユタヤのハイテク工場操業再開のメド、他工場への生産移管も進まないことからイメージセンサLSIの生産が停止し、サイバーショットの製造停止も重なり通期の営業利益をマイナス250億円と試算している。

 

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代替生産工場を持つ例を上に挙げたが、

他の観点ではどうだろうか?

通常トヨタのような Just In Time方式では余分な在庫を持たない(販売量を予測し在庫削減)工場経営が主である。

しかし「在庫を持つということ=C/Fが悪くなる」方式を持って、供給能力に何らかの問題があっても対応する企業もある。

先の東日本大震災の影響があり、在庫を持つこと、また生産地を限定せず、どこでも代替工場で生産できるように生産方針を変更する企業も増えている。

→ 生産地限定でなければならないものがあるならば、その地政学的リスク、人件費、物流コストも正当性を持たねばならない。

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在庫を持たない工場で、且つタイ工場を

供給元とする製造各社への影響度は?

【ディジカメ・光学レンズ】

ロジャーナ工業団地(世界のデジカメ供給の8割)にある日系企業の状況は大打撃を与えている。

またデジカメそのものではなく、日本の製造技術によって設置された光学レンズ工場もある。

その場合は医療機器にも影響することになる。

タイ・アユタヤ ロジャーナ工業団地以外では中国江蘇省無錫市(ウーシー市)がデジカメ生産で知られているが生産能力はあまり高くないため、別の意味での生産調整が求められている。

 

【自動車産業(二輪・四輪)】

北米を主としアジア各国での生産を行っている企業では減産といった生産調整が余儀なくされている。

タイ工場では操業完全停止、

タイ以外の完成車工場では残業中止、稼働週(5日から3日)へ

日系企業すべて同じ影響状況にあるのではなく、トヨタ、ホンダ、日産、いすず、ヤマハでの影響度が違う。

 

工場が浸水していなくても部品が供給されないと工場の操業を取りやめることもあった。

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いかに優れた Just In Time であっても、サプライチェーンの仕組みをより深く考えなければ真価が発揮されないことになる。

 

以上

 

 

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投稿者 斉藤之雄 (Yukio Saito)

Global Information and Communication Technology OTAKU / Sports volunteer / Social Services / Master of Technology in Innovation for Design and Engineering, AIIT / BA, Social Welfare, NFU / twitter@yukio_saitoh